戦国つれづれ日記・其の三

　そこで、風呂敷にくるんで持ってきた荷物（下から　新しい足袋、中啓、黒衣、石帯（黒衣の上からする黒い帯）、墨五条袈裟、紺色の勤行聖典、空の筒）から足袋を出して履き替え、あとの荷物は風呂敷に包みなおし、班ごとにまとめて置いておく。

　そしてもう一度得度式の練習をした後、総御堂へ。
「本日の参拝は１７時までです」
　と書いた看板が立っている。得度式の為に総御堂は貸切なのだ。贅沢な話だ。

　そして、そこでまた並びなおして、いよいよ本番！

　扉が次々に閉じられ、火をつけた朱蝋が並び、先生が横に並び、式務部の人（かな？）が並び、
「かーーーーーーんーーーーーーしょーーーーーー」
「はーーーーいーーーーーー」
　かーん！

　プロ集団による儀式が滞りなく実行されていく。みんな練習の時とは違ってすごく動きもそろっていて、一生に一度の儀式だなーという雰囲気がもりあがる。

　「やっとここまできたのか。長かったな」などという思いがこみ上げてきて涙が出てくる。だが動いてはいけないので涙は流しっぱなし。

…そこまではよかったのだが、鼻水まで出てくる。。

「いいですか。音を立ててはいけません。鼻水が出てもすすってはいけません！垂れ流してください！！」

　というＯ原先生の言葉に忠実に鼻水を垂れ流す。もはや頭の中は、明るいところに出るまでになんとかごまかして拭いてしまわなくてはということで一杯になってしまい感慨もふっとんでしまうのだった…。

　実際感激に浸る暇などなく、履物も
「男女の区別だけで、自分のものを探さないで片端からはいてください！」
という指示のもと最速で履き、大急ぎで参拝部の建物に入って、袴を畳む暇もなく黒衣＆黒袈裟に中啓＆双輪念珠の装束に着替え、めっちゃせかされて総御堂に舞い戻り、得度式第二部が始まる。

　そこで、僧侶になった印に黄袈裟を代表者がもらい、お祝いの言葉を頂き、そして本当に僧侶になったんだー

　という感慨にひたる暇もなくせかされて参拝部に直行し（履物はあいかわらずランダム）墨五条袈裟から黄袈裟にチェンジし

「できた人から必ずＨ井先生の前を通って総御堂に向かってください！」

　という指示に従い、黄袈裟がちゃんと着れているかＨ井先生にチェックしてもらって走るように総御堂の前にいき、カメラ屋さんに記念撮影をしていただいて、参拝部にまた戻り、度蝶（僧侶であることの証明書みたいなもの？）と法名が書かれた紙と、本典（教行信証の原文もの）を頂き、先生から
「おめでとうございます」
　と言われてなんだか泣きたくなる。先生も泣きそうな顔をしている人が何人かいらっしゃった。

　が、あいかわらずそんな感慨に浸る暇も荷物を畳む暇もなく、それからあわただしく荷物をまとめバスに乗り、西山別院に帰っていった。

　その後夕食。お祝いの印なのか白玉小豆がメニューに♪

　そういえば、これで研修施設で食べる食事も最後なのだった。１０日間、ほんとにおいしかったなあ。と思って食堂のおばちゃんに
「１０日間ごちそうさまでした」
　と言うと、おばちゃんもうるっとして
「気をつけて帰るのよ」
　と言ってくれた。

　うりゅっ；ω；

　その後入浴＆休憩＆消灯。次の日は本山の晨朝勤行に御礼参拝に向かう。そしてそれは６時にはじまる。そういうわけで１１日目の起床時間は４時４５分！！　２３時半には消灯だった。

　さて、入浴の後、喫煙所にいる人と軽く「おつかれさまでしたー。おめでとうございましたー」と話をする。

「私、煙草もってきたけど、結局吸わなかったわーｗ」
　と話すと
「え！　煙草もってんの？　売ってくれー！！」
　というリアクションが＠＠

　タスポ導入から西山別院からは煙草の自販機が姿を消し、煙草が途中調達できない状態なので、どうやら煙草が切れてしまったらしい＠＠

「え。いや。あげるし…」
　と言っているが、手の中に１００円玉を握らされてしまう。そこまでされたら申し訳ないので煙草を急いでとってくるとものすごく大喜びされてしまった＠＠；；；

　何となく小説「野火」で戦地で取り残されて死にそうになっているどんな人でも煙草の為なら全財産放り出すものだというセリフを思い出してしまう。

　サロンシップは他の班の人にも買ってもらったし、私が西山別院で何をしてきたのかと聞かれたら、それは「行商」なのかもしれない…。
　
　そんなこんなで干しっぱなしの洗濯物もどうやら取り込んで１０日目が終了。

　さあ、いよいよ最終日に突入だ！！